特集シリーズ 食糧問題解決 第1回

「あなたの食卓から食物が消える日」

序論

食糧問題を取扱うに当たり、最初に触れなければならないことは、食糧問題とは、単に食糧不足を解決し人々を悲惨な飢餓から救い出すことだけをさすのではありません。人類全体が、食糧を等しく正しく食べて、豊かな食文化を確立し、人生の目的を正しく追求できる状態を創り出すまでのことをいいます。何故なら、食糧は人間にとって死活的に重要な人間生活の必需品ですが、食糧が人生の最終目的ではないからです。「衣食足って礼節を知る」と言いますが、食がこんなにも痛撃を受けている人類社会では、人生の目的や価値さえまともに追求出来ない状況です。そのため、私たちは徹底的に食糧問題の本質を探り、抜本的、現実的な解決策を構築する必要があります。

とはいえ、この問題を解決する妙薬を提示できた人は人類史上、未だかつて誰もいないのが実情です。ですから、私たちは、この歴史的な全人類的な問題を確実に解決するために、全力を尽してこの課題にとり組む必要があります。食糧問題はボランティア的発想で単純に解決できる課題ではありません。しかも、言葉だけでなく実際に解決する方策を提示しなければなりません。マルクスも「食の平等」を謳いながら共産主義唯物論や唯物史観・労働価値説まで構築し、食の平等社会の実現に挑戦しましたが、200年余りの挑戦の末、完全に失敗いたしました。片や、自由、人権、平等、法の支配等を普遍的価値であると謳ってきた自由主義も民主主義も、食の平等には程遠い世界に行き着いてしまっています。どこに解決策はあるのでしょうか。

皆様は、世界で最もたくさんの余剰食糧品を抱えている人口3億人の米国に、4700万人もの飢餓人口がいる事実を信じられますか 。米国南西部のテキサス州エル・パソに行かれたことがありますか 。全く平らな平野の真中を米国とメキシコの国境線が走っています。米国側のエル・パソでは高級車が走り、高層ビルが立ち並び、ショッピングモールが沢山あり、人々は豊かな生活をしています。しかし、一度国境のゲートをくぐって隣の町、メキシコのフアレスに入ると状況が一変します。土埃の道路が走り、土壁で造った家の周辺には、土埃で真黒になった人々が仕事もなく力なくたむろしています。自動車はまばらで、明らかに貧しく、多くの人々が飢えに苦しんでいるのが一目瞭然です。治安も悪く、辺りの美しい自然とは裏腹です。米国では25セント(約50円)で電話は30秒しか話せないのですが、ここでは25セントで100回も電話がかけられます。同じ平野で生活している人々の暮らしが、国境の両側でこんなにも違う風景になって展開されているのです。

1998年、ホンジュラスに強力な台風が襲いました。その時、ホンジュラスの人々はメキシコ国境を越え、米国に侵入していきました。その時、米国の要請を受けてメキシコ軍が国境に配備され、米国への侵入者は、見つかれば直ぐに撃ち殺されました。それでも、ホンジュラスの人々は殺されることが分かっていても、空腹を解決するために米国になだれ込んで行きました。命懸けで食糧を求めたのです。食糧は生命をも越えさせるのです。

5年前、ハイチ地震では 30 万の人々が 亡くなりました。その時、判ったことは、ハ イチの人々の 60 %が泥で野菜を包み太陽 の熱で焼いて、泥パンを食べていたことで す。空腹を凌ぐため泥パンを食べて4歳 までに 40 %の子供達が死んでしまいま す。周りはカリブ海で豊富な魚に囲まれ、 即ち最高の食糧源がすぐ手の届くところ に生息しているにもかかわらず、恒常的 な食糧不足なのです。同じように水が豊 富で、世界最大のイタイフーダムをもつパ ラグアイのチャコ地方に住んでいる人々 も同様です。そこには電気もなく、病院も 学校も家もなく、パラグアイ河の泥水を 飲んで4才までに 40 %の子供達が死んで いくのです。

アラブの春で、チュニジアやリビア、エ ジプトの独裁政権が倒れていったことも 食糧問題がその大きな要因といわれま す。3年前から世界の穀物市場が2倍か ら3倍に高騰し、貧しい方々に皺寄せが 行き、彼等は生命をかけて食べるために 独裁政権を倒したのです。人口増加と飢 餓問題と格差社会をこのまま放置すれ ば、2020年から2025年頃には人 類は食糧戦争に突入するだろうと国連 は予測しています。人口が 90 億人になり、 国連が予測しているように、飢餓人口が 現在の2倍の 20 億人になれば、ちょうど ノアの時代と同じだといわれます。ノアの時は、人が人を食べるようになり、母親が子供を食べるようになったために神様が洪水審判を行いました。

長い人類歴史の中で食糧問題を解く鍵となる諺がありました。「一匹の魚をくれた人の恩は、その魚を食べ終わると忘れてしまう。しかし、どうしたら魚が捕れるかという方法を教えてくれた人の恩は、生涯忘れることがない」という諺が、日本には勿論、英国にもエジプトにも中国にも米国にも韓国にも、どこにでもあります。従って、国連の食糧プログラムは腕に覚えのあるキャプテンを雇って、ボランティアでアフリカの貧困な国々に送って漁業を教えています。しかし、それによって食糧問題を改善できたとか、解決できたという話は、未だに聞いた事がありません。

イエス様の時代、すなわち2000年前、人類の人口は3億人だったといいます。1 9 4 5 年8 月15日、第二次世界大戦終結時の人口は25億人といわれ、2000年間で22億人増えたことになります。ところが戦後、人口は急激に増加し、1 9 7 5年には45億人となりました。戦後30年間で、これまで2000年かけて増えた人口とほぼ同数の人口が増えたことになります。そこで1976年、国連は全ての国家元首を集めて、第一回食糧サミットを開きました。世界の食糧問題が一挙に顕在化したためです。この時、「科学の成果によって食糧は科学的に増産可能なので、食糧問題は20年で解決できる」と宣言しました。20年後の1996年、同じイタリア、ローマで、第二回食糧サミットが行われました。ここで判明したことは、食糧問題は20年前よりはるかに悪化し、科学の力では食糧問題を解決することが出来ないという事実です。科学の発達はむしろ公害問題や環境破壊を引き起こし、科学による食糧増産は見込めないことが判明しました。そこで、第二回食糧サミットは、結論として「解決の目途は立たないことを認識したうえで、20年先の2016年までには食糧問題の50%を解決しよう」と宣言しました。事実のところは解決を放棄した状態です。到底食糧問題を解決できる見通しはありません。ますます悪くなっています。

2 0 1 0 年、オバマ大統領は当時のG8(主要8か国)から5年間かけて約5兆円を開発途上国に援助すると言いました。日本も昨年、アフリカへの援助として民間も含め3兆6000億円のインフラ投資を決めました。しかしながら人類の食糧問題は、先進国家の食糧援助や経済援助で解決することではありません。開発途上国のインフラを整備してあげたら食糧問題が解決することでもありまん。それらは、ますます勝者独占の社会をつくりだすだけです。中国は自国内に世界最大の飢餓人口を抱えながら、他国のインフラ援助をしています。何のために援助しているのでしょうか。第二回食糧サミットで、国連は、2025年頃、世界は人類崩落を意味する食糧戦争に突入するだろうと予測しています。実際、人類は地球の表面積の3分の一しかない陸地で、穀物、野菜などの農作物や牛、豚、鶏などの家畜などによって食糧を得ようともがいています。陸上では人類が必要とする3分の一の食糧しか生産できませんが、陸地の2 倍ほどある海の魚介類によって、必要な食糧の3分の2を賄うことができます。スウェーデンの研究所が発表している調査結果によると、海を、神様が創造した状態と同じ本然の海に戻せば、海では400億人が食べられる量の魚介類が生息できると試算しています。実際、魚は平均30万個の卵を産み、マグロは120万個といわれています。しかしながら現在は孵化率が0.8% です。世界的に漁穫高は年々減少しています。公害と環境破壊と乱獲のゆえです。養殖も食糧問題解決の一つの方法となるでしょう。

一方、日本の食糧安保は著しく貧しい現状です、食糧をお金で買えなくなった時、即ち日本がどんなに高いお金を積んでも、食糧輸出国が食糧を売らなくなった時、日本は即、自立できる備えが必要です。世界の食糧不足の影響が日本に及ばないことは絶対にあり得ません。公害問題や環境問題を討議するcop21(国連気候変動枠組条約締約国会議)でも、食糧サミットでも、非公式会議で話される内容は、「結局、全ての問題の原因は、人間そのものが造り出している」ということです。人間が変わらない限り、最終的には食糧を奪い合う、歴史上に類例のない悲惨極まりない食糧戦争に突入していくのは火を見るより明らかです。

実際、食糧問題を引き起こしている原因は、生産量や分配の仕方とか消費の問題ではありません。それらが問題の原因であると考える限り、人類の食糧問題は解決しないでしょう。単純に生産量を合計してみると食糧は充分あるとか、科学 がもっと発達すれば解決できるだろうと 言う人がたくさんいます。それでは、なぜ 今まで解決できなかったのでしょうか。人 類歴史に常に存在した食糧問題を、人類 はこれまで一度たりとも、食糧問題を解 決したことがありません。逆に、食糧の豊 かすぎる人は食べ過ぎで身体を壊し病気 になるという、もう一つの食糧問題を引き 起こしています。

米国のある食糧問題研究所は、「人類 始祖アダムとイブが堕落してエデンの園 から追い出された時、神様が『あなたがた は、これから額に汗して食糧を獲るよう になるだろう』と言われた。その時以来、 人類は食糧問題を抱えている。食糧問題 はアダムとイブの堕落に起因している」と 言っているほどです。即ち、人類は他人を 犠牲にしなければ、充分な食糧を自力で は生産できない堕落した存在であると 言っているのです。

現在、6秒に1人の割合で飢餓によっ て人々が死んでいます。1日に6万人が 餓死し、1年に2000万人が餓死する という現実が展開しています。他のどん な原因よりも、飢餓によって、今のこの瞬 間にも多くの人々が死んでいるのです。人 類の最高最大のこの難問題をどの様に解 決し、飢餓を根絶していくことができる でしょうか。始めに触れましたが、全ての 人々が豊かで健全な食生活をして、「人 生の目的を極めていく」ためには、一体ど こに解決策があるでしょうか。それは、地 球の3分の2を占める「海にある」という ことは論をまたないでしょう。これまで食 糧問題を解決することができなかった根 本原因は、陸地のみで食糧問題を解決し ようと考えたところにあると言っても過 言ではないでしょう。

1989年、英国の食糧学者マイケル・ クローフォード博士は、DHA(ドコサヘ キサエン酸)を発見しました。このDHA が人間の身体に最も適合した蛋白質であ り、健康のために最良の蛋白質であるこ とが証明されています。しかも、この蛋白 質は魚にしかないというのです。この DHAは、人間の頭脳まで入っていくこと ができ、頭脳を活性化し、頭脳の働きを 良くするといわれています。確かに英国で は古くから魚は「Brain Food 頭脳食」と いわれて来ましたが、クロフォード博士は それを科学的に実証したわけです。この 発見以来、WHO(世界保健機構)は、「日 本人が世界で一番健康で長生きする原因 は、日本人が魚介類の蛋白質をより多く 摂っているから」と毎年発表しています。 米国人は「Eat fish, live longer 魚を食べ なさい。そうすれば長生きする」という標 語を掲げて週の3日間は魚中心の食事を するようになりました。1994年頃か ら米国人は、以前より 10 倍以上の魚を食 べるようになり、寿司ブームが驚異的に 世界に広がって行ったのもこの頃からで す。肉類を食べ過ぎるとそれだけ病気が 多くなります。陸という陸はすべて海に 囲まれています。海岸であれば、どこでで も魚は充分に捕れます。海からパイプで 砂漠に海水を引けば養殖ができ、砂漠で 飢えることもなくなります。人間の身体は3分の2が塩水を中心とする水分で成り立っています。地球も3分の2が塩水で覆われた海球です。ですから、人類の食糧問題を解く根源的な鍵は、海に人類生活の基本をシフトすることです。

海には人間を根源的に変える力があります。海は食糧資源のみならず鉱物資源、エネルギー資源など、陸地よりはるかに豊かな海洋資源に恵まれています。しかし、それ以上に注目すべきことは海のもつ特性です。海は国や民族、宗教が違うからといって分け隔てしません。窪みができたら海水は自動的に高い所から低い所へ動き、窪みを満たして平準化を計ります。海は親のような愛に包まれたところです。精神性も科学性も創造性も、陸地とは比べられないほど高い所、被造世界を創造された神様に一番近い所です。海は、人間の霊性や精神性、肉身の五感を深く鋭敏に陶冶し、創造性、科学性、主管性等を飛躍的に啓発し伸張させる革命的なところです。

今日まで陸上主体の人類史は、結果として発展より後退が、建設より破壊が、成長より負債がより多く展開して来ました。諸説のように生産と配分と消費を調整するだけでは、食糧問題を解決することは絶対に不可能です。陸から海へ発想を大逆転し、「海が人間の主たる生活の場」という海洋思想に基づいた社会を迎えてこそ、食糧問題を完全に解決することができるのです。

雑誌 海洋真時代 Vol.2より抜粋
2015年6月3日発行

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