剣崎の釣り

釣り人の聖地 剣崎・松輪

縄文時代から丸木船に乗ってマグロやクジラなどの大型魚を捕獲していた神奈川県三浦半島。その南端にみうら漁協剣崎・松輪地区がある。

東京湾と相模湾の中央に位置する船宿の盛んな剣崎漁港。この漁港には間口港と江奈港があり、江奈港を拠点とする地区を松輪地区と呼ぶ。

この地区の船宿は23軒、所有する船の数は全部で60隻を越える。船宿経営が始まってから大体50年になるという。昭和30年代、一本釣り漁師から切り換える方が現れた。その当時、船に乗り切れないほどの釣り客が殺到し、個人経営から家族・親族で協力して従事するようになった。更に、客のニーズに応えるために、船を買い換え、3年で船の元が取れるほどだったという。

現在、ここで使われる船は全て特注、1隻5000~7000万円。一番高い船で1億円。船の大きさに合わせてエンジンやソナーなどの設備も揃え、客の安全と釣りの楽しみを提供している。

今回利用した船宿の一義丸は、19トン大型(21㍍級)快速船840万馬力など合計4隻を所有する。

取材協力してくれた瀬戸丸には8人乗りの仕立て船など3隻を所有する。

一年中釣りができる資源豊かな海。黒潮と東京湾系水のぶつかる海域で、年間を通して真鯛・マアジが釣れる。春は太刀魚・ヤリイカ・メバル。夏はイサキ・マルイカ・カサゴ・シイラ・サバ。秋はワラサ・イナダ・松輪サバ・メジマグロ・カツオ。冬は石鯛・カワハギ・太刀魚・ヤリイカ・メダイ・底物(カレイ等)が狙える絶好の釣りポイントとして人気だ。

さらに漁場が近い。出港直後にカワハギ、他の漁場も30分もあれば到着でき、釣り時間が多く取れるのも魅力となっている。

乗合船の釣りに初挑戦

11月30日早朝、自分の希望する船の座席番号を取り会計へ。「ワラサ・マダイ船ですね。大きいのを釣って魚拓を作りましょうね!」明るい女将さんが座席番号の印字された乗船券と声援をくれた。  港では大勢の釣り人がごった返していた。付け餌、仕掛けなどを購入し、自分の乗船する船へ。スタッフに乗船券を見せ、場所を確認。乗合船では、受付した場所にずっと滞在する。その場所で釣りをし、食事もすることになる。  朝7時、一斉に船が出港する。この日の遊漁船は50隻ほど。客層もスタッフも男性がメイン。20代から70代と幅広い年齢層。客のほとんどが一人参加だ。

月明かりの下で、黙々と釣りの準備を進める。座席は船から海を見る形でほぼ等間隔になっている。背中側には船長の居る操縦席のある部屋で、反対側の様子は全く見えない。

日が昇り始めた。海と朝日しか見えない中、波を切って走る事10分。船が止まる。船長のアナウンスで指示棚を確認し、一斉に竿を下ろす。聞こえるのは波と風と息遣いだけ。

じっと魚を待ち続け、餌を食べたら合わせ、リールを一気に巻き上げる。ワラサは群れで泳ぐ回遊魚。一人が釣り始めると、一気に活気付く。

リールを巻く音の響く中、「タモ(網)取って!」の声。瞬時に人々が反応する。見事な連携で網が渡されて行く。ワラサ3キロ、真鯛1キロ、イナダ1.5キロ。良形の魚が次々上がる。釣り客は興奮の渦にドンドン引き込まれる。ワラサ釣り初心者ながら1匹釣る。周りを見ながら準備し釣りをする。教えてくれる人は居ない。個々が個々に夢中で釣りをしている。数分もしないうちに群れが去ったか?一気に静まり返る。再び船長のアナウンスが入る。「移動します。」一斉に竿を上げ、次の漁場に移動する。これを数回繰り返し、帰港時間になる。

釣りではしばしば、釣り糸同士が絡(から)むオマツリという事が起こる。潮の流れの激しい変化や、動き回る青物釣り、混み合う釣り場では、オマツリが起こりやすい。5~6本の釣り糸が絡む事もある。船の全体から糸が出ているので、糸を引っ張って合図しながら大声で話す。反対側の釣り客の顔は見えないので、聞いていてくれると思って糸をほどきはじめる。「この竿の方は糸が出すぎ。少し巻いて!こっちの竿の方は、まだ巻かないでよ!」「痛てて!針が刺さった!糸をほどいてるんだよ!この竿の人!巻かないで!」「すみません~~。」かすかな謝罪の声が聞こえる。周りでは次々釣り上げているので、焦る気持ちが伝わってくる。  しかし、ほどけないと釣りができない。我慢してじっと待つ。「はい!この竿OKよ!」感謝して針を引き寄せ、再び餌を付けて釣り再開。

しばらくして、再び船長のアナウンスが入る。「終わりです。帰港します。」今度は片付けに追われる。

船が港に着く直前、スタッフの方々が貸し竿などの備品とゴミを素早く回収する。

下船すると、右舷と左舷では釣れた量が5倍は違っていた。閉まらないクーラーボックスから4キロほどのワラサを2尾出して、梱包用の発泡スチロールに移し宅急便の手配をする方もいた。釣果の報告会があちこちででき、再び港はごった返している。次々と船が戻って来る。片付けを終えた方から速やかに帰路に着く。あっという間に駐車場が空になっていた。

船宿密集地の知恵「正直と信用が第一」

今回、2つの船宿の方にお話を伺う事ができた。一義丸の船宿には天井も壁も魚拓が貼られている。「これは10月に釣れた真鯛で、20キロよ。」女将さんが誇らしげに説明をしてくれた。2時間ほどして船長が戻られた。船の掃除や明日の準備をしてきたそうだ。下船後も新聞各社や釣具店、雑誌などに釣果情報を提供する仕事があるという。「ネット関係は息子がやってくれるので助かるよ。」「生活できないようなら、息子には勧められないよ。」船宿経営での生活は安定しているようだ。

子供たちがおやつを頬張る姿も見え、孫の笑顔で英気を養うという。

瀬戸丸の船宿に行くと、女将さんが温かいお蕎麦を出してくれた。身も心も温まるサービスに感謝する。カワハギ釣りに乗船したおしゃれな若い女性のグループが釣りの話で盛り上がっている。場が一気に和む。

景気の影響がすぐに反映する厳しさもあるが、「正直と信用が第一」。日々の努力は惜しまない真っ直ぐな船長は、仲間も大事にする。

この地区の利点を伺うと、協力して船宿経営ができる事だと言う。客が乗り切れない時は他の船宿を紹介したり、釣り大会などのイベントを企画したりと、活発に交流。「先月の女性だけのカワハギ釣り大会には100名以上参加したよ。」釣り雑誌に特集も組まれた。

夏場には子供連れの家族がアジ釣りを楽しむという。「これからのシーズンは空気が澄んでとても綺麗な富士山が見られる。楽しみが増えるよ。」「もっと多くの方に海に来て欲しいね。」海の魅力は語りきれないと、船長さんも女将さんも微笑んでいた。

瀬戸丸:0468-86-1917  一義丸:0468-86-1453

横浜の釣り

スポーツボートとは

日本最大のマリーナと呼ばれる神奈川県・横浜ベイサイドマリーナ。アジアからの観光客も訪れ、年間を通してボートショーや釣りトーナメントなどのイベントも盛んな人気のマリーナである。

ここにホビーワールドマリン横浜支社の事務所があり、当社のボート、グットゴーTE2810(全長30フィート全幅9フィート3インチ、11人乗りのスポーツボート)を係留している。

株主や釣りクラブ会員・国民海洋基金会員がクルージングや釣りを楽しんでいる。

ボートの運行は男性のキャプテン(船長)と女性のマネージャーの2人が担当している。

ボートについて伺うと、遊漁船のチャーターボート(少人数の貸切船)に使われているのと同じ仕様の船だという。「気の合う仲間や家族と、アットホームな雰囲気でクルージングや釣りを楽しめるのが魅力です。」とキャプテンが教えてくれた。

次に客層を聞くと、初めての乗船、初めての釣りという方が多く、大半が女性だという。

初心者でも釣れる!

どのような工夫をされているのか伺った。

「服装のアドバイスや船酔い対策(前日の体調管理方法)もお伝えしています。」
「初心者の方には竿の持ち方から教えています。」

「初心者でも釣りやすい座席があるので、本人にお話して確認してから案内をします。」と回答があった。

男女ペアの体制は好評だが、同性どうしの方が話しやすくて良い、釣りを紹介してくれた友人も乗船するので「安心する。」という声もあるそうだ。

初めて釣りに参加する方が事務所に来ていた。家族から借りた竿を使うという。キャプテンが竿をチェックし、使い方のレクチャーが始まる。「この竿は投げ竿ですね。こちらの竿の方が使いやすいですね。」一つ一つ笑顔でゆっくりと丁寧に説明し、「船の上でもう一度説明しますから、忘れちゃっても大丈夫ですよ。」と言って5分ほどで終了した。

次々お客さんが集まる。最低3人で出港し、今日は5人だった。釣りの準備をしてマリーナへ移動する。

船に乗り込んでほどなくすると、夜景から日の出に景色が変わる。「毎日(景色が)違いますよ。飽きないですね。」操縦しながらキャプテンがつぶやく。操縦席は仕切りが無いので、スタッフと会話できる。

「あの三角屋根は八景島です。」「向こうの明るいのは木更津ですよ。」漁場に移動中も観光気分を楽しめる。

船が止まり、アンカーを下ろす。黒色形象物を掲げる。キャプテンから指示棚を教えてもらい、仕掛けや餌を付けて、竿を下ろす。初心者が多いので、今回は釣りやすいアジ釣りだそうだ。コマセ釣り、ルアー釣り、タイラバ釣りなど、それぞれの釣りたい方法で魚との勝負開始。マネージャーは餌をアオイソメ(虫)にしてアジを狙うようだ。

釣る座席にも、工夫がある。初めての方は、釣ることだけに集中できる座席を勧めてくれる。

波が高く、小さいアタリが分かりにくい。「それ、引いてますよ。」と教えられリールを巻くと金色のアジが釣れた。誰かが釣れると、その様子もすぐ見れる。なかなか釣れなくてもアドバイスを貰って、すぐ挑戦できる。

イージス艦や大型船、漁船。他の船が近くを通過する時は「右舷側に引き波が来ますよ。」と教えられ、体を固定し波に備える。

「今日は絶対釣って帰る!」一対一でマネージャーからレクチャーを受けた釣り2回目の婦人が50㌢の真鯛を釣り上げた。アジ用のライトタックル(軽い竿)だが、釣り方のポイントが分かれば、こんな嬉しいサプライズも可能に。釣り上げた本人は、涙を流して喜んでいた。

それを見ていた周りの方々は刺激され、「真鯛!真鯛!」と念を込めて釣りをする声も聞こえる。この船は、360度釣りが可能な設計で、自由に移動して釣りを楽しめる。特に走る青物には最適だという。

途中、雨が降ってきた。寒さを感じていた方はキャビン(ドア付きの小部屋)に移動した。キャビンは、ソファと小さなキッチンやトイレがあり、着替えや休憩だけでなく、荒天時の避難場所にもなる。

「終了です。」船長の合図で糸を巻き、竿を上げ、帰港する。  波を切って飛ぶように走る船。体を固定できれば、好きな座席に座ってよい。船尾の波や周りの景色、操縦するキャプテンと同じ景色を眺めるのも可能。また釣果の話をしたり、写真を撮ったりと様々に帰港までの時間を過ごす。

マリーナには魚をさばく場所がある。(サバなどは船上で処理をする。)ここには、保存用の氷やゴミ箱も用意されている。魚をさばいたことが無くても大丈夫。経験者と一緒にさばく練習もでき、おすすめの料理法も聞けるので、帰宅後の料理の不安も解消する。

せっかくだからと、パッパッと慣れた手つきで刺身盛りが完成していた。刺身盛りを囲んで皆で過ごす時間も、笑い声が絶えなかった。

乗船前は、海は怖いと言っていたお客さんから、「次は何を釣ろうか?」そんな会話も聞こえてくる。性別・年齢・国籍を問わず、釣りは魅力的なようだ。

このマリーナのある横浜は東京湾の内海にあたる。内海の波は外海に比べると穏やかなので、家族連れや初めての釣り・クルーズに利用する方が多いそうだ。

ここも年間を通して様々な釣りが楽しめる。お客さんの体力やニーズに合わせて、アジ、サバ、ワラサ、イシモチ、真鯛、カワハギ、太刀魚などを狙うという。

海で生まれ変わる

海の魅力について、マネージャーにお話を伺った。

「海に船で1時間だけでも出た。それだけで、人間は解放され変わることだってできるのですね!」「生まれ変わったようです!」という感想や、表情が物凄く明るくなる方もいる。海の凄い力をお客さんから教えてもらうことの方が多い。更に、海の魅力を知ると、「船酔いしても海に行きたい!」というお客さんの声もあるという。

想像を超越するほどスッキリした表情を沢山見てきたので、「陸上で百回議論し合うよりも、一回船に乗って海に行く方が良い!それぐらい乗る前と後では違いますよ。」と力強く語ってくださった。

次にキャプテンにお話を伺った。いろいろな釣りが出来るのはスポーツボートの魅力の一つだそうだ。コマセ釣りは初心者でも簡単に釣れる。しかも、いろいろな魚が釣れるので釣る側には良いのだが、魚の乱獲や環境汚染の原因にもなるという。

アメリカなどでは生き餌釣りやルアー釣りが主流で、生き餌はとても安価に買え、無駄が少ない。また、ルアー釣りの方が難しいので、釣れた時の感動が大きく、魚を守ることにも繋がる。そして何よりも、釣りそのものをスポーツとして楽しんでいるという。生き餌釣り・ルアー釣りの文化が日本にも広がれば、もっと環境にやさしい趣味になるのでは?と、若いキャプテンから未来を見据えた話を伺えた。

HWM釣りクラブ:045-353-8475

ニューヨークの釣り

パーティーボート(乗合船)

漁船の改良利用ではなく、クルーザーやフェリーから改良し発展させた船なので、居住性や釣り人の自由性が大幅に保障されている。100人程の釣り人が乗合いできる。

釣りは自由。しかしターゲットの魚によって、皆殆ど同じ釣り具を使用し、同じ釣り方をする。

中央に大きな部屋があり、そこでコーヒーを飲みながら談笑したり、休憩したり、釣り具の準備もできる。地下階にはベッドもあり、遠出や宿泊も可能。屋上では日光浴をしたり、海の風景を楽しむことが出来る。

船長やメイト(乗組員)は、殆どが漁船のキャプテンとメイト出身のため彼らは魚のスポットをよく知っている。お客さんが釣った魚を買い上げて販売することも出来る。

料金は1人1万円、沖合いのマグロ釣りは2万円、よく釣る人は経費以上の収入がある。朝6時に出航して、2時頃、港に帰ってくる。

港には釣り具店や餌屋さん、ボート器具、海や魚に因んだ装飾品販売店、ボート修理店、シーフードレストラン、魚小売店、瞬間冷凍・地方発送設備などが完備している。もちろん、小さなチャーターボート(貸切の釣り船)も多く停泊している。

(峰尾)

雑誌 海洋真時代 Vol.1より抜粋
2015年3月3日発行

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