Oceanic View

飢餓は壊滅的な大問題!
生命だけでなく、人間の尊厳性・可能性までも破壊する!

「飢餓問題」は、私たちが通常考えるよりも、想像以上に„壊滅的”な問題であり、できるだけ早く解決する必要のある緊急問題です。飢餓問題は、現代文明における「不平等」が最も顕著に現れた現象です。
今号よりシリーズでお届けするOceanic Viewでは、まずシリーズNo.1として、このことについて、読者の皆様と共に考察していきたいと思います。

【羅針盤】

・食糧問題こそ、一時も先延ばしできない問題です。今日の世界では、一日に四万人が飢えて死んでいます。「自分のことではない、自分の子供のことではない」と言って、知らないふりをしてはいけません。

・食糧問題は、今後人類に非常に深刻な危機をもたらします。なぜなら、限りある陸地で生産されるものだけでは、2050年には97億人になると言われている全人類を、すべて食べさせることはできないからです。ですから、海にその解決策を見出さなければなりません。海は未来の食糧問題を解決できる鍵です。数十年前から絶えず海を開拓してきた理由もここにあります。食糧問題を解決しなければ、理想的な平和世界を建設することはできません。

多くの場合、日本や米国など、先進諸国に住む我々は、飢餓の問題を緊急の問題ではなく、「自分自身には関係のない誰かが、„海の向こう側のどこかで”苦しんでいる問題、遠く離れた問題だ」と他人事のように感じているのではないでしょうか。今日は、この飢餓問題に迫りたいと思います。世界平和について考えるとき、飢餓がどれほど深刻なものであり、緊急に解決しなければならない問題であるか、以下の二つ観点から共に考えてみましょう。

まず第一は「飢餓問題は、戦争や気候変動に匹敵する最も根本的で緊急な問題」という点、第二は「人類がこれまで経済的、技術的に飛躍的な進歩を遂げたにもかかわらず、なぜ、いまだに飢餓問題を解決することができないのか」という点です。

なぜ飢餓問題は深刻で緊急な問題なのか?

理由1

膨大な数の人口に影響を及ぼす

WFP(国際連合世界食糧計画)によると、世界総人口77億人のうち、2019年の飢餓人口は約8億2100万人であり、9人に1人が飢餓状態。近年、世界経済の成長の中で、年々減少傾向にあったにもかかわらず、2014年以降、再びゆっくりと増加傾向にある。WFPは、2030年までに飢餓人口は8億4000万を超えると予測。

理由2

毎年の飢餓による死者数は、人類歴史の中で最も壊滅的な戦争による死者数をはるかに超えている

人類歴史で最大の死者数を出した第二次世界大戦(1939‒45)では、すべての国の戦闘員と民間人を含む死者数は5640万人と推定されている。約6年間にわたる戦争での年間平均死者数は約1000万人。それに比べて、飢餓問題は、なんと年間約900万人の死者を出し、いつ終わるのか、終わりが見えない。6年間飢餓が続くだけで、第二次世界大戦での死者数を超えてしまうのだ。

理由3

飢餓は何億人もの子供たちに恒久的な損害をもたらす

飢餓の子供たちが経験する「発育阻害」問題は、我々の想像をはるかに超えて深刻だ。栄養失調のために、子供たちは平均的な子供たちよりも身長が低く、身体が弱く育つ。例えば、サハラ以南のアフリカの子供たちの40%は、成長に影響を与える栄養失調の問題を抱えていると言われている。 彼らはしばしば平均的な子供たちよりもはるかに背が低いのだが、それは背の高さに影響を与えるだけではなく、脳の成長にも影響を与えてしまう!言い換えれば、飢餓は子供の身体的成長に影響を与えるだけでなく、脳の成長をも制限し、人間としての潜在能力を永続的に制限してしまう。ビル・ゲイツも飢餓について語っている|「この問題は、慢性的な栄養失調というものを解決しないと終わりがみえない。教育でもインフラでも、良い統治でもないのです」と。

WFP(国際連合世界食糧計画)は、「子供の人生の最初の2年間の栄養失調による発育阻害は、元に戻す事はほとんど不可能。子供は、体重を取り戻すのと同じ方法で身長を回復することはできない。発育不全の子供は、より頻繁に病気になり、学ぶ機会を逃し、学校の成績が悪くなり、成長しても経済的に不利になり、慢性疾患に苦しむ可能性が高くなる」と警鐘をならしている。

FAO(国際連合食糧農業機関)は、「栄養失調は、世界で唯一最大の病気の原因だ」と、飢餓について同じく警鐘をならしている。飢餓による年間900万人の死亡のうち、なんと500万人は5歳未満の子供だという!たとえ辛うじて生き残ったとしても、彼らは病気や、永続的な肉体的および精神的損傷に苦しむ可能性が高い。そのため、飢餓の問題が続く限り、膨大な数の「肉体的にも精神的にも不幸で不利な人口」が存在することになり、人類はこれによって多くの問題を抱え続けることになる。世界を一つの身体と譬えるなら、身体の一部が、常に傷み破壊され続けているということになる。

理由4

飢餓は人間性を奪う

飢餓とは、人間として経験する最も悲惨な精神的状態の一つ。飢餓の状況では、願うと願わざるとにかかわらず、食糧のために物乞いをしたり、盗みを余儀なくされるような生活を強いられる。このような心理的状態が子供の時から続けば、その子供はどのように育つだろうか。人間としての尊厳や自尊心、自立精神など、人間として考えられない状況が続くのではないだろうか。栄養失調が、うつ病や過度の精神不安を起こすことも心理実験などで実証されている。

朝鮮戦争時に、北朝鮮の興南強制収容所に投獄されていた或る老師も、収容所の中で目撃した囚人たちの深刻な飢餓状態について語っている。ー「ご飯を食べながら死んでしまった囚人のその口から食べ物を掘り出して、それを奪い合いながら食べるほどだった」…人間がこのような行動に駆り立てられる時、その人に尊厳、自尊心などを感じる余裕があるだろうか。このような動物的な心理状態で育つ子供たちがいるということを想像するだけでも、我々は同じ人間として堪えられないのではないだろうか。

なぜ飢餓問題は解決しないのか

ここまで飢餓問題がどれだけ悲惨かつ破壊的であるかを共に考察してきた。それでは、次に、人類が歴史上、なぜ、この問題の解決が、ここまで難しかったかについて考えてみよう。

理由1

飢餓問題の解決が困難な理由の一つに、「飢餓問題が、貧困や戦争、気候変動など他の主要な社会問題に強く結びついている」という事実がある

貧困

飢餓の主要原因は貧困。世界人口の10%以上が極度の貧困、つまり個人所得一日あたり207円以下の状態で生活している。この状態で十分な食料を購入することは非常に困難なのだ。例えば、サハラ以南のアフリカと南アジアでは、人口の約57%が健康的な食生活を送る余裕がない。また、飢餓状態は人の仕事や学力能力を低下させるため、更なる貧困の原因となり、それが更なる飢餓を生み出している。

戦争・紛争

飢餓の第2の主要原因は、戦争や紛争だ。貧困と飢餓が永遠なサイクルを生み出すのと同様、飢餓と戦争は循環的関係にある。多くの場合、内戦は、極端な飢餓による政府への怒りによって引き起こされる。同時に、戦争は空腹な人々の悲惨な状態をさらに深刻にしてしまう。戦争時、紛争時には、貧困層と飢餓層が最も苦しむことになる。飢餓と不平等による怒りは、極端な経済闘争期に、独裁者や共産主義体制を生み出す原動力となることが多く、その例としてヒトラーやスターリンを挙げることができる。

気候変動

近年、多くの学者達は、近い未来、気候変動が飢餓の主要原因になると予測している。例えば、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)などを含む、多くの学者達が、「2050年までに、海岸線の浸食、沿岸洪水や農業破壊などによって変動が起き、難民になる人口が数百万に達するだろう」と予測している。支援なしでは、これらの難民の殆どが飢餓に苦しむことは間違いない。

他の原因

飢餓の原因は他にもある。食料の生産や配給が困難になる原因として、貧弱なインフラや不安定な市場が要因となって食品価格の変動がおき、価格が高くなることによって、貧困層が突然十分な食料を買うことができなくなってしまうことだ。

理由2

飢餓問題が複雑な第二の理由は、これまで世界には全人類を食べさせるに足りる充分な食料があった。にもかかわらず、飢餓問題を解決することができないという事実がある

なぜだろう。WFP(国際連合世界食糧計画)は、世界には人類のために充分な食料があるにも関わらず、それを必要とする人々に食料が届かない事実を指摘し、「飢餓は、世界最大の解決可能な問題である」としている。また、IFRC(国際赤十字・赤新月社連盟)は、「2010年には世界で925万人が栄養不足している。しかし同時に、15億人が肥満に苦しんでいる」という事実を報道した。つまり、この世界には飢える人口より肥満人口の方が多いというのである!

問題は食料生産ではない。技術革新は、現代の人類がより効率的かつ確実に、歴史上他のどの時代よりも、多くの食料を生産することを可能にしている。これまで人類は、世界人口の為に充分な食料を生産している。問題は最も食料を必要としている飢餓状態にある人々に、食料が届かないということだ。これは国際的にも、多くの場合、各国内でも言えることである。
農業国家のパラグアイを見てみよう。去る2000年には、パラグアイは南米でもっとも飢餓人口の多い国の一つだった。しかし現在では着実にその地域における新たなる経済大国への成長を遂げながら、わずか10年の間に、飢餓人口は、人口の約20%から10%未満にまで減少している。ところが、約8000万人分の食料を生産するパラグアイの人口は約700万人であるにもかかわらず、10%未満もの空腹な人口が存在するというのは、不思議だ。
食糧はどこに消えていくのだろうか。そこまで余分に食料を生産しているはずのこの国に、なぜこれだけの数の飢餓人口が存在するのだろうか。答えは簡単。生産食品の殆どが輸出されるから。それは国内の10%の空腹な人たちの手には渡らないからだ。なぜこんなことが起こるのだろうか。

パラグアイは、世界の多数の国同様、自由市場、資本主義経済で成り立っている。歴史上、資本主義は驚くべき生産性をもたらし、近代的な栄光の技術革命を人類にもたらした。しかし、同時にそれは経済的、技術的進歩の恩恵の殆どが裕福な人口によってのみ楽しまれるという「社会的不平等」という名の慢性疾患を伴うものだった。

資本主義は、個人の利益の最大化を常に目標とするため、「お金」という十分な動機がなければ、製品は飢えた人々に向けて流れるのは難しいのだ。空腹層の人々は、通常お金もなく、物流インフラが乏しい場所に住んでいる。従って、食品生産者は彼らに向けて食料を配布するというインセンティブ(動機・誘因)がほとんどない。資本主義の視点から見れば、高いお金で商品を買ってくれる海外の顧客がいるのに、はるかに安い値段で貧困層の人に商品を売ろうという結論に達するビジネスがないのだ。飢餓は、利益優先主義の中で起きている現象だと言わざるを得ない。この現実を克服するために、飢餓人口に食料を届ける無数の非営利団体がある。しかし統計の示す通り、彼らの努力は十分な結果をもたらしていないのだ。

多種多様の社会的不平等の症状!中でも飢餓の問題こそ、現代の人類文明においての最も壊滅的、かつ急性なる「不平等」の象徴的症状だといえる。

これは別トピックとなるが、「不平等」は、ほぼ全ての人間社会における体系的な問題であり、歴史を通して資本主義と社会主義との間のイデオロギー闘争の主要な理由である。従って、「不平等の象徴である飢餓」の問題は非常に複雑な問題なのだ。

結論

まず最初に、私たちは飢餓問題の破壊的な性質について触れた。そして飢餓問題は死者数の点で、人間歴史最悪の戦争よりも、更に多くの死者を出している点に言及。そして戦争が、その解決のためには何世代もかかるような外的および心理的ダメージを残すように、飢餓問題も何世代にわたって継続的な貧困を生み出し、膨大な数の人々に、明白な肉体的精神的不利と損害をもたらすことを理解する事ができた。

私たちが世界平和を目指すならば、「この問題から来る悪影響がどれほど大きく、世代を超えて響くのか、そしてどれだけ早急にこの問題を解決する必要があるのか」ということを認識しなければならない。
次に、この問題の複雑さについて触れた。問題は、人類全体が生産する食料の量だけではなく、それをどの様に食料を必要としている人々へ、いかに届けることができるかというところにある。我々人類の殆どは、資本主義システムの中の自由市場で活動している。そのため、道路も舗装されていない僻地の、代価を払うことのできない絶対的貧困にあえぐ人々に食料を届けるという自体が、困難になる。これらの人々は現在の世界の在り方の中で、置き去りにされているのだ。

飢餓とは、神の下の兄弟姉妹、人類一家族であるべき人間の間で起きている「不平等を表す最も象徴的かつ深刻な兆候」です!
飢餓問題は本当に差し迫った問題であり、できるだけ早く解決しなければならない問題なのです!

雑誌 海洋真時代 Vol.11より抜粋
2021年6月25日発行

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